時間をかけて経営計画を作り、立派な計画書ができあがる。ところが数か月後、それは引き出しにしまわれたまま——。中小企業の現場で、決して珍しくない光景です。
こうなると「計画の作り方が悪かったのだろうか」と考えがちですが、私の経験では、原因は計画そのものの出来ではありません。もっと単純なところにあります。
計画が使われない、3つの理由
1. 計画を「見る場」が決まっていない
これが最大の理由です。計画は、それを開いて眺める機会がなければ、どれだけ精緻に作っても存在しないのと同じになります。逆に言えば、月に1回でも「計画と実績を並べて見る時間」がカレンダーに入っていれば、それだけで計画は生き続けます。
作ることに時間をかけたなら、見る場を決めることにも同じだけの意識を向ける価値があります。
2. 数字を出すのに手間がかかりすぎる
「見よう」と思っても、実績を集計するのに何時間もかかるのであれば、忙しい月は後回しになります。そして一度飛ばすと、翌月はさらに再開しづらくなる。
ここは仕組みで解決できる部分です。会計データや日々の記録から自動で数字が集まり、開けばすぐ見られる状態を最初に作っておく。手間をゼロに近づけることが、続けるための最大の条件です。
3. 計画が「変えてはいけないもの」になっている
一度立てた計画を絶対視すると、環境が変わったときに計画のほうが現実と合わなくなります。そして合わなくなった計画は、見ても仕方のないものとして扱われるようになる。
環境が変化する中では、計画も状況に応じて見直すことが大切です。計画どおりに進まないからこそ、計画には意味があります。
「作る」より「回す」に重心を置く
経営計画は、完成させて終わる書類ではなく、判断のために毎月使う道具です。であれば、力を入れるべきは作り込みよりも、回し続けられる設計のほうです。
できなかったことを責めるのではなく、そこから学び、次の意思決定につなげる。
想定と違った結果が出たとき、それは失敗ではなく情報です。なぜ差が出たのかを数字と現場の声から確かめ、やり方を変えていく。その繰り返しが、会社を少しずつ確実に前に進めます。
まず、ここから始めてみてください
もし今、計画が使われないままになっているなら、次の3つだけ決めてみてください。
- いつ見るか——毎月◯日、と日付で決める
- 誰と見るか——一人だと続きません。社内の誰か、あるいは外部の第三者と
- 何を見るか——数字は絞る。まずは売上・粗利・資金の3つで十分です
この3つが決まれば、計画は動き始めます。完璧な計画書より、毎月開かれる不完全な計画のほうが、はるかに経営の役に立ちます。